思考備忘機構

趣味と思考と文体練習

忘年推しプロ語り2019 その5

 

DOIのレポを見て無限にニコニコしています。友野くんのムーランルージュが見たすぎる。

今回はエキシビション縛りで推しプロを語ります!

 

村元哉中 / クリス・リード  EX "Hi-Lo" 

これは2018/19シーズンに含めていいものか迷いますが……。DOIだし7月だしいいよね!

「過去との決別」がテーマ。「過去に囚われ、縛られながらも、自分の力で前に進む、自分の道を切り開くというストーリー」だそうです。ご本人のブログでもストーリーを説明してくれています。
まさか振り付け時から解散を予感していた訳ではないと思いますが、今見ると色々と考えさせられるテーマです。
このプログラムを初めて見たとき、とてもワクワクしたことを覚えています。また新たな表現の扉を開いた二人、これからどんな演技を見せてくれるのだろうと。冒頭のコレオ、蔦のように絡みつく、「困難」の象徴。進みたいのに囚われる。離れたいのに縋ってしまう。女性が男性に抱きつくリフトは2017/18シーズンのEX"Unsteady"にも似た振付があったのですが、そちらは愛や不安からの解放といった印象を受けるのに対し、こちらは離れたいけど離れられない、退廃的な雰囲気が表現されています。二人が8の字の起動を描くステップの躍動感が、素晴らしいです。一番好きなのは「困難」を断ち切るその終わり方。二人の、男女の関係に囚われずを魂をぶつけ合う演技が大好きだったし、これからも何度も見返すと思います。

 

◆Vincent Zhou  EX "SLOW DANCING IN THE DARK"

時系列がぐっちゃぐちゃですみません。ワールドでお披露目されたヴィンスの新EXです。高難度ジャンプが注目されがちな選手ですが、これを見て彼も表現者であることを実感しました。独特の浮遊感と、"In the daaaaaaaaaaark"のロングトーンに合わせた技の配置が特徴的なプログラム。 冒頭からもう良いですよね。イーグル3Aからの一連の完璧な音ハメが気持ちいい……。そして美(ヴィ)ーーーグルからのクリムキン。このプロのどこが良いって、こういう技が盛り上げるための飛び道具としてじゃなく、ただ音楽を表現するために使われているところなのです。あとなんてったってエモい。彼が得意とする(と私が勝手に思っている)エモーショナルな表現をとことん堪能できます。

ストップの後の振付は意外性があっておもしろいです。この日、というか国別のヴィンスさんは超絶好調でジャンプも身体の動きも素晴らしかったんですが、唯一ニースラだけはワールドの方がよく滑ってました。何故だ。ケヴィン・エイモズさんリスペクトのスライディングもまた曲想に合ってますね。

このプロはここ数ヵ月でで一番リピしてる気がします。たぶん曲自体の中毒性が高いというのもある。MVを見てから演技を見るとまた違った印象になっておすすめです。

Joji - SLOW DANCING IN THE DARK - YouTube

 

余談ですが、初演の動画が88rising(この曲を歌っているJoji氏が所属してるグループ)公式からあげられていてその再生数がなんと160万超え。やばば。

 

(2019/7/11 追記)

DOI版があまりに最高だったので追記をします。テレビ放送のものなので動画は貼らないでおきますが……。

まずワールドでは動きに若干ぎこちない部分があり、国別では逆にちょっと元気すぎたのが、DOIでは程よく滑り込まれ、力を抜くべきところは抜く、アンニュイな演技になっていました。そしてジャンプの音ハメ!3Aは元からパーフェクトでしたが、あのタイミングでの3Fと3Lzにしたのは大正解です。これで音にハマっていない箇所がほとんど無くなりました。気持ち良すぎる。心地いい、それなのに胸が苦しくなる、そんなエモーショナルな表現もさらに進化しています。歌いながら滑ってましたもん。私は歌いながら滑るスケーターだいたい好きになります。振付もブラッシュアップされ、クリムキンイーグルとエイモズさんスライディング(?)がそれぞれベティスクワットイーグルっぽいのと二度目のイーグルに変わってました。変更後の方が流れがありますね。ここはどっちも好きだけど。

ヴィンスのことはジュニアワールド優勝後からしか知らないのでそれ以前の演技とか見ようかなと思うんですけど、このプロが好きすぎて気付くとこればっか見てるんですよね。とりあえずジョシュア・ファリスさんは天才です。ありがとうございます。

 

◆Javier Fernandez EX "Prometo"

最後だと明言して臨んだユーロ。SP、FSはもちろんEXまでスペインの曲で固めてきました。

ハビといえば明るくて洒脱で楽しい、そうでなければ格好いい表現が得意なイメージがありましたが、切ない表現も良い、すごく良いんです……。

愛する人との別れを惜しむ曲だと思うのですが、それが現役生活に別れを告げるハビに重なってしまいます。滑り出した時の、何とも形容し難い表情。こんな表情で滑る彼を私は初めて見ました。

一瞬一瞬を慈しむような丁寧な演技。「サロンでタンゴを踊ろう」という歌詞のところでタンゴっぽいポーズがあったり、スペインらしさを感じる振付が散りばめられているのがハビらしくて良いです。

後半、音楽に合わせて振付が激しくなるところは歌うようなエモーショナルなスケートを見せつつ、本当に丁寧に美しく踊っています。

このプロは救いがなくて、最後も悲しいままうなだれて終わるんです。そこが好き。ハッピーエンドもいいけれど、こちらの方がずっと余韻に浸れる気がします。

ちなみに、この曲はこんな歌詞で締めくくられます。

”te prometo que vamos a volvernos eternos”

僕らは永遠になると約束するよ

切なくて寂しいのに、どこか温かい。今までもこれからも間違いなく、唯一無二の存在です。

 

 

羽生結弦  EX "春よ、来い" 

 

2連続ウィルソン振付ですよ。そうだよ私はウィルソンのこういうプロが好きなんだよ。

ていうかフェアリータイプの羽生結弦が好き ?ということをやっと自覚しましたね。ほのおタイプも同じくらい好きなんですけど。

このプロで表現しているものは「自分の人生観」だそうです。好きに解釈してくれ(意訳)と仰っていたので勝手に想像しますが、どんな功績にもどんな高みにも満足できず、幸せは長くは続かないし辛さはどこまでも付き纏うけれど、それでもずっとずっと"春"を探し追い求め続けてる、ってことですか??なんてことだ……羽生結弦……。

羽衣のような衣装も相まって天女だなんだ言われてましたが、確かに非人間的な美しさです。性別どころか人間の域を超えている。でも、後半にかけて段々と人間らしくなってくるんです。まさに雪が融けて花が芽吹くように。

3Loの後の振付、振り返って手を下ろす、たったそれだけなんですけど、なぜこんなにも美しいのでしょう。その後のスピンが上手すぎ。羽生さんはシンプルにスピンが上手すぎなんです。(2回言った)

"苦しみの先に見える希望"を思わせる振付の後、このプロのハイライトのひとつである氷面口づけハイドロブレーディング。さいたまワールドではここの照明が最高に素晴らしかったんですがなんで映像残ってないのおおお。ぶわああって花が咲いたんですよ。

私が一番好きなのはイナバウアーです。少しタメがあってから腕を広げるところ。衣装のひらひらとピアノの旋律が相まって、本当に大輪の花が咲くみたいで。大好きです。

昨年FaOIの放送でこれを見たときは完全に魂を吸い取られてしまい画面の前で呆然と泣いていましたが、今年のFaOIではほのおタイプの新プログラム・マスカレイドを現地で観て理性をぐちゃぐちゃにされてしまいました。きれいにオチがつきましたね。ついてないか?さようなら。